静岡日和
磐田で栽培された綿花

遠州磐田の織物

遠州地方の繊維業の歴史

別珍生地織物工場
磐田市福田の別珍製織工場

静岡日和の商品では、地元磐田市を中心とした地域で製織された織物・生地を商品に活用しています。
「静岡で織物?」という方も多くいらっしゃると思われますので、当地の繊維・織物業の歴史と特徴をご紹介いたします。

遠州地方とは

「遠州」と聞いてどの地域のことを指すのかは昔の地理に詳しい方や、静岡県にゆかりのある方しかお分かりにならないかもしれません。

静岡県は東西に広い県で、中部地方(駿河)、西部地方(遠江)、東部(豆州)が歴史の変遷を経て1つの県として成り立っています。

遠州とは、大井川以西から浜名湖までの西部地方を指します。

県庁所在地のある静岡市を中心とした中部地方は比較的商業の街、浜松市を中心とした西部地方は工業の街として発展してきた違いもあり、地域ごとに人の気質も異なります。

繊維業の興り

今では綿花の栽培はほぼ国内では行われていませんが、日本でも16世紀ごろから各地に綿花の大生産地が形成され、遠州地方でも17世紀ごろから盛んに栽培されるようになりました。

江戸の末期には当時の浜松藩主が機織りの技術を伝え、農家の副業として広く織物が生産されるようになります。

昭和に入ってからも、農家が機屋(糸から生地を織る仕事)に一定期間修行に入り、その後独立し専業となった方も多くいらっしゃいます。
昭和20年代のガチャマン景気の時代には、東北地方から住み込みで主に女性の労働者が出稼ぎに来ることも多く、そのまま地域に根付いたため現在でも東北出身のご年配の方もお見えになります。

工業の礎

明治時代以降、近代化する日本の産業の中で、とりわけ繊維業は日本の主力産業として大きな成功を収めました。

人力によって織られていた織物は、急速に機械化され、 静岡県湖西市出身の豊田佐吉(現トヨタ)は1896年に豊田式木鉄混製力織機(豊田式汽力織機)を開発、 1930年には浜松市南区出身の鈴木道雄(現スズキ)がサロン織機を開発する等、当地に発動機のメーカーが生まれていきました。

現在、浜松市を中心とした地域が四輪や二輪のメーカーの礎の一つとして、織機の発動機開発があったといえます。

天竜川以東の織物業

磐田市福田の別珍織物工場の猫
磐田市福田の別珍織物工場の猫

静岡県西部を南北に流れる河川、天竜川。川の西側が浜松市、東側が磐田市です。
静岡日和は磐田市で創業し、主に天竜川以東(磐田市を中心とした地域)の生地・織物を多く利用しています。
磐田市はいくつかの小さな自治体が合併し現在の磐田市を構成していますが、昔から繊維業が盛んな地域は沿岸部の福田エリア(旧福田町)です。
※福田は「ふくで」と読みます。

福田の織物業の興り

福田地区も他の遠州の地域と同様に、織物の歴史は江戸時代までさかのぼります。
1831年(天保2年)に庄屋の寺田彦左衛門(磐田には寺田姓が多い)という人物が、 大和国(奈良県)を旅した際に綾織の厚地綿布である雲斉織をみて、福田の人々の農業や漁業の副業に適していると導入したのが始まりといわれています。

鉄道開通以前は、船の往来も多く、船の帆につかう「帆布」も当地で製織され、現在まで続いています。

別珍・コーデュロイの大産地

明治中期ごろから、当時下駄の鼻緒の材料として人気のあったコール天(コーデュロイ)製織の研究が始まり、明治28~29年頃に製品化され、急速に発展していきました。
その後、別珍(ベルベティーン)の製造技術の当地で確立され、現在でも国内生産の95%以上を磐田市福田が生産する大生産地として続いています。

別珍とコーデュロイ

  • 多様な畝をもつコーデュロイ 多様な畝をもつコーデュロイ
  • 独特の光沢が美しい別珍 独特の光沢が美しい別珍

生地に畝のあるコーデュロイは秋冬の洋服にもよく用いられる生地として思い浮かぶ方が多いと思います。
別珍は、劇場の緞帳(どんちょう)や印鑑ケースの内張り、ひな壇などにも用いられています。両生地ともに綿のパイル織物の一つとして、兄弟のような存在です。

別珍・コーデュロイともに剪毛・仕上整理等、特殊な加工技術が必要とされますが、磐田市では製織から製品化まで一貫して製造できる体制が整っています。

製造のための各工程は専門の工場(といっても小規模な工場が多いです。)が担当しています。 特にパイル織物(タオル地)飛び出たパイルをカットする作業は、剪毛・カッチングと呼ばれ、技術と根気が必要な作業です。

磐田市ではコーデュロイはカッチング、別珍の場合は剪毛と呼ばれています。

主にコーデュロイのパイル織物カッチングを専業とされている「カネタカ石田株式会社」様のWebサイトでは、カッチングの概要が掲載されています。
現在は二代目の若手の職人さんがカッチングと日々向き合われています。

その他の織物

別珍やコーデュロイ以外にも、多様な生地を生産しています。元々帆船用に織られ、現在にも続く帆布。最も薄い11号から7号程度まで製織されています。
また、リネン(麻織物)も番手の太いものから細いものまで、多様なリネンも人気です。

近年は、遠州綿紬と呼ばれる昔ながらの紬も再び脚光を浴びています。

静岡日和では、バッグの用途に向く帆布・リネンを主として活用しながらも、別珍や遠州綿紬といったその織物が個々にもつ美しさや、楽しさも取り入れながら商品化しています。